鳥という生きものは、
こちらが思っている以上に、人をよく見ています。
いや、
人を見る目だけは、やたらと厳しい。
CAP!に長くいると、
「この人には近づく」
「この人は、ちょっと様子見」
そんな鳥たちの“採点表”が、
なんとなく見えてくるようになります。
そんな中で、
どうにも腑に落ちない人物がいました。
その人が現れると、
鳥たちの反応が、明らかに違う。
「おや?」
「来た?」
「来たね?」
ザワザワしたかと思うと、
次の瞬間には、
頭、肩、腕……空いているところは全部。
こちらが
「いやいや、今日は撮影なんですが」
と心配するほどの人気ぶり。
(鳥って、そんなに甘くないんだけどなぁ……)
その方の名前は、関根史郎さん。
ペット雑誌「アニファ」のカメラマンさんです。
池袋時代のCAP!にも、
三芳町に移ってからのCAP!にも、
よく取材に来てくださいました。
私はというと、
撮影の邪魔にならない距離を保ちつつ、
完全に観察モード。
撮影技術を盗もう、なんて気はありません。
知りたかったのは、ただ一つ。
「なぜ、鳥がこの人に群がるのか」
何度見ても、わからない。
特別な動きがあるわけでもない。
声をかけるわけでもない。
ましてや、追いかけたりもしない。
それなのに、
鳥たちは自分から寄っていく。
ある日、ついに聞きました。
「関根さん、鳥、お好きですか?」
すると関根さん、
ちょっと照れたように、こんな返事。
「好きですけどね。
皆さんほどじゃないですよ」
……それだけ。
自慢もなければ、
「鳥に好かれる秘訣」なんて話もない。
でも鳥たちは、
今日も関根さんの肩にいました。
結局、理由はわからないまま。
その答えは、
思いもよらない形で、やってきます。
2001年1月26日。
JR新大久保駅で、あの事故が起こりました。

ニュースを見た瞬間、
身体が冷たくなりました。
正直に言います。
もし自分が同じ場に居合わせていたら、
足がすくんで、動けなかったと思います。
「助けなきゃ」と思っても、
身体は、そう簡単に動きません。
でも、関根さんは行った。
考えるより先に、
身体が動いた。
それは、
“勇気を振り絞った”というより、
“生き方が、そのまま出た”
そんな行動だった気がします。
誰にでもできることじゃない。
関根さんだから、できたこと。
そのとき、
ようやく、腑に落ちました。
ああ、
だから鳥たちは、あの人に集まっていたんだ。
この人は、
「何かあったら、必ず動く人」。
相手が鳥であっても、
人であっても、
その姿勢は変わらない。
鳥たちは、
ちゃんと、それを見抜いていたんでしょう。
いや、
人間より先に、知っていたのかもしれません。
1月26日は、
私にとって、忘れられない日です。
勇気とは何か。
優しさとは何か。
命に向き合うとは、どういうことか。
関根史郎さんは、
言葉ではなく、
生き方で教えてくれました。
関根史郎さんのご冥福を、
あの日、あなたの肩に集まっていた鳥たちとともに、
静かに、心から、お祈りいたします。

(関根史郎さんが生前出版された写真集です)